【宮崎正弘 隠蔽中国】 「さよなら、チャイナ」が合言葉だ。 ウォール街のファンドも中国を去る。三菱自動車の中国撤退方針に代表されるように、日本企業も数百社が引き上げた。 【写真】南鳥島の海底で採取された大量のレアアースを含む「夢の泥」 中国人の海外亡命も年間10万人を超えた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2022年の中国出身者の亡命希望者数は11万6338人だった。 外国企業の直接投資が激減したため、中国は虎の子だった米国債を静かに売却した。日経新聞は「(今年8月時点で)13年比で4割も減った」(10月28日)と報じた。外貨準備高に異変が生じている証拠だろう。 ドル建て社債のデフォルト(債務不履行)をやらかした不動産開発大手「中国恒大集団」は8月、海外資産凍結没収を恐れてか、米ニューヨークの裁判所に破産手続きを調整する連邦破産法15条適用を申請した。 米国では国家安全保障上の懸念から、中国資本などによる農地や農業関連事業の買収を制限する動きが出ている。中国政府が世界各国の大学などに設置している中国語教育機関「孔子学院」は、米国では次々に閉鎖された。 米ワシントンのスミソニアン国立動物園にいたパンダ3頭は今月初め、中国に帰国した。アトランタ動物園の4頭も来年には貸与期限が切れる。約50年ぶりに米国からパンダが去ることは、「米中関係の冷却化」を象徴する。 中国の国内投資家らは不動産投資をやめた。 建設途中のマンション工事がストップしており、被害者らは「不動産ローン契約不払い」を宣言している。上(政府側)は預金を調べ、「不動産を買え」と強制している。 投資家らは株式投資からも静かに撤退し、迂回(うかい)路でビットコイン、ゴールド買いに走っている。換物投機の対象は、時計や骨董(こっとう)、日本の古いカメラなどだ。中国人による、日本での「爆買い」は突然死したが、土地買いは続いている。 中国にとって頼みの綱は、台湾企業の投資が出ていかないことだ。 電子機器受託世界最大手である台湾の「鴻海(ホンハイ)精密工業」は、台湾人実業家の郭台銘会長が創業・経営し、中国大陸の十数カ所に工場を持ち、一時は100万人を雇用していた。米アップルのiPhoneの受託製造でのし上がった。同社は日本でもシャープの買収で知られる。 郭氏は「台湾のトランプ」のイメージで、来年1月の総統選に名乗りを上げていた。こうしたなか、中国当局が同社の主力拠点に税務監査を実施したことが、10月に明らかになった。郭氏の陣営は先週末、立候補の届け出はしないと表明した。 台湾政府は中国進出企業に撤退を呼びかけ、すでに30万人が台湾へ引き揚げた。だが、台湾企業が40兆円ほどを中国と香港に投資したままだという。「中台関係は複雑怪奇」といえる。 ■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に『半導体戦争! 中国敗北後の日本と世界』(宝島社)、『間違いだらけの古代史』(扶桑社)、『ステルス・ドラゴンの正体』(ワニブックス)など多数。