習近平が「経済」を見殺しにしている…
ここのところ中国経済には改善の兆しが見えてきたが、それは期待外れに終わり、むしろ中国政府の無策ぶりを露呈するきっかけとなるのではないか。 【写真】習近平の第一夫人の美貌とファッションセンスがヤバすぎる…! 前編『習近平、まさかの「愚策」…! ついに政府が認めた「不動産バブル」のヤバすぎる実態と「経済見殺し政策」の悲惨な中身』では、中国が日本の「失われた30年」のように、長期停滞へ入ろうとしていることを指摘した。 しかし、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏に言わせれば、「中国は日本のようにはならない。もっと悪くなるだろう」ということである。 また、日本経済を長年ウオッチしてきたイエスパー・コール氏も、「バブル崩壊後の日本は高成長を続ける中国への輸出拡大で恐慌を回避できたが、今の中国には輸出拡大が期待できる国が見当たらない」と分析しており、中国の長期停滞はもはや免れない情勢だ(9月29日付日本経済新聞)。 そして、さらにもう一つ、最大の理由を付け加えたい。それは中国政府が景気刺激策にあまりに後ろ向きということだ。
習近平のヤバすぎる「妄想」
1990年代の日本政府は、景気下支えのために大規模な景気刺激策を打ち続けたが、中国政府は需要を喚起する景気刺激策を講ずる気配を一向に見せていない。 政府関係者の間でも、「大規模な財政出動が必要」との声が出てきている(9月19日付日本経済新聞)のにもかかわらずに、である。 その原因として挙げられるのは、「習近平国家主席が2008年に実施された4兆元規模の景気刺激策のことを苦々しく思っている」との見立てだ。 習氏の景気刺激策に対する評価は、「中国の国民は苦労せずに資金を得ることばかりを考える『パラサイト(寄生虫)』になった。社会全体に浪費と汚職が蔓延し、巨額の債務だけが残った」という散々なものだからだ(9月27日付ニューズウイーク日本版)。 輸出拡大も期待できず、政府の下支えがなければ、中国経済が深刻なデフレに陥るのは時間の問題だろう。 日本は長期にわたりデフレに苦しんだが、賃金が上がらなくても労働意欲の目立った低下はなく、幸いなことに、社会全体に深刻な混乱が起きることはなかった。日本には「デフレ耐性」があったというわけだが、中国にこのような耐性があるとは思えない(9月28日付日本経済新聞)。
中国「EV墓場」問題がさらに深刻になる
足元の動向で気になるのは、資金繰りに窮した地方政府が庶民の懐を圧迫し始めていることだ。地方政府は資金の確保に焦るあまり、意味不明の罰金や違反切符を科していることが問題になっている(9月27日付BUSINESS INSIDER JAPAN)。 筆者は以前のコラムで「電気自動車(EV)の大量廃棄(EV墓場)」を取り上げたが、この問題はさらに深刻化しそうな気配だ。 9月21日付中国新聞週刊は「中国各地のEV充電スタンドの料金が2倍となり、EVを手放す所有者が出始めている」と報じた。値上げの原因は、電気料金そのものではなく、充電サービスのための料金だ。 充電サービス料金は「設備の運営費用を賄うために充当される」とされているが、カネ不足に悩む地方政府が「取れるところから取る」とばかりに理不尽な値上げを実施しているのかもしれない。 日々の生活が苦しくなっている中、「お上」の搾取にあえぐ人々の不満は高まるばかりだろうが、これに対し、中国政府は思想や行動に対する「引き締め」のさらなる強化で乗り切ろうとしている。
犯罪の増加が止まらない…!
中国政府は「我が国の犯罪率は世界最低水準だ」と豪語しているが、刑事裁判で審理された人数が2001年の約74万人から2021年には170万人超に急増したという「不都合な真実」がある。 中国政府は近年、国防費を上回る予算を社会秩序維持のために投じているが、犯罪者数の増加は止まらない。刑務所も過密化し、再犯を防ぐ更生の役割を果たせていない有様だ(9月30日付共同通信)。 治安悪化に歯止めがかからない状態の下で深刻なデフレが発生すれば、耐性を持たない中国社会は大混乱に陥ってしまうのではないだろうか。 さらに連載記事『習近平、打つ手なし…! 中国製EVが「バカ売れ」するウラで、中国で「EV墓場」が大問題になっていた! 』では、EV先進国と称される中国が抱える本当の姿を詳しくお伝えしよう。
藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)