エコ意識の高いヨーロッパ人から見ると、日本人の「エネルギーの無駄遣い」に仰天するシーンが少なくないようです。 【画像】日本の住宅とは「厚さ」が違う! 最も有名な例としては全国津々浦々に設置されている自動販売機と24時間営業のコンビニエンスストアが挙げられますが、今回は日本人が“あまり自覚していない無駄遣い”に目を向けてみたいと思います。
◆ヨーロッパ建築は断熱性・気密性が高い
以前、オーストリアの首都ウィーンにある世界遺産シェーンブルン宮殿内の住居をテレビ取材したことがあります。驚いたことに宮殿の壁は厚さが50センチもあり、宮殿の住人によれば完成した1749年当時としては断熱性にも優れているようでした。さすがに宮殿は特例としても、その他のウィーンの建物も軒並み分厚い壁がスタンダードです。 国は変わりますが、現在筆者が住んでいるスイスの住居は、窓ガラスが三重で窓部分の厚さはトータルで7~8センチほどもあり、外気が入り込みにくいように窓枠はいくつも段差を付けた構造。内壁・外壁も断熱材が入った分厚い造りです(【画像1】参照)。 日本は地震国である上に湿気も高いため、ヨーロッパのような分厚い石壁造りは理想的ではないのでしょう。それでも、ヨーロッパ人から見ると、日本家屋の断熱不足と、それに伴う冷暖房の非効率性はどうしても気になるようです。
◆ヨーロッパ人が驚く、日本の冷暖房環境
前述の通り、ヨーロッパ建築は「いかに気密性を高めて効果的に保温保冷するか」に主眼を置いているため、日本の冷暖房環境にも驚きを禁じ得ない様子です。 都内の戸建て住宅に暮らす40代男性に話を聞いてみると、ヨーロッパ人の驚きを肯定するかのように語るのです。 「正直、失敗したなと思ってます。僕自身は実家がマンションだったこともあり戸建てへの憧れがあり、当時住んでいたマンションの目の前に戸建てができたときには家族が増えた勢いもあって飛びつくように購入したのですが……。冬の室内がこんなに寒いとは、驚きと後悔しかありません」 この男性に限らず、冬の室内が寒いという悩みは少なくないようで、薄手アウターを羽織るなどして節電対策しているとの声も耳にします。 一方でデパートやショッピングモールなどの施設では、冷暖房を稼働させているにも関わらず扉が大きく開け放たれている場面に遭遇します。日本で生まれ育った筆者には取り分け珍しい事例ではなかったものの、ヨーロッパ人の夫からすると、あまりに非効率で仰天するといいます。 日本はヨーロッパとは比較して扇風機の使用率が高いのが、一因ではないでしょうか。扇風機を使う感覚の延長線上で、窓や扉を開放した状態で冷暖房を使用することに抵抗がないのかもしれません。とはいえ、エネルギーや光熱費の浪費に変わりはありませんから、もう少し環境負荷を意識してみたほうがよさそうです。
◆商業施設のトイレ照明も「消すのが常識」
筆者がヨーロッパで生活するようになってカルチャーショックを受けたのが、照明に対する意識の違いです。使用していない部屋の照明は“必ず”と言っていいほど消す習慣があり、これは会社や病院、レストランのトイレも例外ではありません。 レストランのトイレは地下に設置されている例も多いため、薄暗い石造りの階段を下りて真っ暗なトイレに入るのは少々怖くもありますが、使用時にだけ明かりをつけ、退室時に消灯するのが基本となっています。 ヨーロッパ人のエコ意識の強さや、エネルギーやお金の無駄を徹底的に敬遠する姿勢は「ケチくさい」と見えるかもしれません。けれども公共料金の高騰が続く現状を考えるにつけ、私たち日本人もその姿勢を見習う段階にきているのではないでしょうか。モーションセンサー付きの照明など、ストレスのないエネルギーの有効活用が進むことを願っています。 この記事の筆者:ライジンガー 真樹 元CAのスイス在住ライター。日本人にとっては不可思議に映る外国人の言動や、海外から見ると実は面白い国ニッポンにフォーカスしたカルチャーショック解説を中心に執筆。All About「オーストリア」ガイド。