みんかぶプレミアム特集「株で爆速1億円と最強日本株50」第2回は名物投資家の木戸次郎氏が海外アクティビストの動向や、株式相場2023年後半戦の注意点を語る。とくに投資家に警告するのは中国不動産バブルだ。「大きな影を落とす」その理由とは……。海外アクティビスト注目の最強日本株20とあわせてお届けするーー。
どうなる後半戦…前半戦の金融不安はどこにいった
東京市場は日経平均3万1000円前後~3万3000円前後で安定しつつある。皆の関心はといえば、2023年後半戦でこのまま順調に3万4000円~3万5000円までバブル以来の高値を更新していくのか、もしくは再び3万円割れの水準まで落ち込んでしまうのかということであろうと思う。 株価が好調に推移するのは誰もが望むところだが、昨年、我々が不安になった出来事と言えばシリコンバレーバンク破綻からのクレディスイスの相次ぐ破綻だった。この時は偶発転換社債(contingent convertible bonds)COCO債が無価値になったという報道が世界を駆け巡り、大きな衝撃をもってマーケットに受け止められた経緯があった。こうしたCOCO債(AT1債)の無価値化再燃リスクを危惧する声も囁かれるが、欧米諸国は既にインフレも落ち着きつつあり、利上げからいつ利下げに移行するかという状況になりつつあるので、ひとまず安心といえる。 クレジット投資についてはクレディスイスの一件が教訓になっていて三井住友フィナンシャルグループがAT1債を1400億円発行すると決定したこともあり、完全に持ち直したといってよいと思う。
そろそろマジでやばい中国の不動産バブル
むしろ好調な株式市場に水を差しかねないのは中国の二つの要因だと思う。 ひとつは不動産バブル崩壊によるデフレ懸念であろう。かつては日本も不動産バブル崩壊でデフレが長期化して金融危機を招き、失われた30年に繋がった経緯があるが、GDPの約3割を占めるとされる不動産業界の不況が若年層の高失業率を招き、そのことが消費の冷え込みの長期化に繋がっており、今やゼロコロナ規制以上に中国経済減速の主因となっているようだ。更に建設工事が止まり廃虚のようになった集合住宅がいま中国各地で広がっていて、一説には30億人分以上のストックが未完成のまま放置されているというのだ。これが中国経済に大きな影を落とすトリガーとなる可能性は否定できない。 そして、もう一つの不安は中国企業が欧米に保有している不動産資産の売却を急ピッチで進めている点だ。おそらくこれは台湾有事に備えての中国政府からの指令だと思う。なぜならウクライナ✕ロシアの例を見れば一目瞭然だが、万一、中国が台湾進攻すれば西側諸国は中国資産の凍結する可能性が高いからである。中国政府がこうした準備を着々と進めていること自体が脅威であり、実際に有事となれば金融市場は一時的に大混乱となるであろう。不動産バブル崩壊によって中国経済が完全に減速すれば、政府の求心力は確実に低下してくるので対台湾進攻を前倒しにしてくるというリスクが一番の懸念なのだ。
円安なのではなく、円弱なのではないか
これらが現在、考えられる日本の株式市場の成長を阻む可能性のある要素だが、私が一番危惧しているのは止まらない円安なのである。円安=株高というのは高度経済成長時に安い人件費とともに自動車産業など輸出企業が多かったためにできた方程式だ。しかし、現在はこの方程式は必ずしも当てはまらないのである。インフレ率2%台では抑えられているにもかかわらず円安による原材料の高騰で、家計も企業もかなり苦戦を強いられているし、実体経済は確実に傷んでいる。一方、危ぶまれつつも引き続き好調な米国経済については元をただせば資産バブル状態が根底あるというのが背景であるといえよう。日本は日銀が長期金利の上限を0.5%→1.0%に引き上げたものの、依然として円安が止まらないでいる。 もしかすると円安なのではなく、円弱なのではないかとさえ思うのだ。このまま円弱状態が放置されれば、いずれは大きな歪となって跳ね返ってくることになる。こうした点は常に念頭に置く必要がある。要するに円安による原材料・物価高と緩やかすぎる賃金上昇の乖離が大きくなっているのだ。勿論、賃金上昇がなされれば、需要拡大による物価上昇が持続的に定着する。実はこれが望ましい姿である。現状、そうはなっていないのが問題なのである。 今のままでは日本経済はインフレ率2%には届かないばかりか、安定した2~3%の経済成長は絵空事に終わるのではないかと思う。
木戸次郎