放送倫理・番組向上機構(BPO)は11日、東京都内で会見を開き、放送倫理検証委員会で審議してきた昨年1月12日に放送されたTBSの報道番組「news23」(月~木曜午後11時、金曜午後11時58分)の「JA自爆営業」をめぐる調査報道での取材源の秘匿について放送倫理違反があったとの意見書を発表した。 審議の対象となった報道はJA共済の職員がノルマ達成のため、自身や家族を加入者に不必要な契約を結ぶ「自爆営業」の実態を内部告発者のインタビューなどで放送。ある職員が実態を証言する際、声は変えられ、顔にはぼかしがかけられていたものの、服装、体形、腕時計や自宅の室内が映っており、放送後、視聴者からBPOに人物が特定できるのではないかとの指摘が届き、昨年8月から審議入りしていた。 委員会ではTBSの内部調査報告書や制作に関わった担当者らからヒアリングを実施。取材の経緯や告発者との事前のやりとりなどについて検証した結果、告発者側が「腕時計は大丈夫ですか」と確認したが、ディレクターは外すことは求めなかったという。告発者から事前に放送しないよう要請されていた映像が流れるなど、情報源秘匿に欠けていた。 また、共済の申し込み手続きのシーンはすでに完了していたものの再現だったことが分かり、TBSは昨年9月、「news23」内で訂正・おわびをしていた。ほかにも告発者の自爆営業の件数は実際放送された件数より少なかったことも判明した。 小町谷育子委員長は「真実性を担保するため、原則は実名報道だが、情報提供者の保護を貫くことは放送人の基本的倫理であり、放送局の責任において厳守しなければならない」とし、放送倫理違反があったと判断した。 高田昌幸委員長代行は調査報道について「不正、不祥事が相次ぐ中、調査報道で明るみに出すことが良い方向に向かうことになる。情報提供者の保護が重要であり、TBSは痛恨の失策をしたが、情報提供者が二の足を踏むようになってはならない。放送界全体で調査報道を続けてほしい」と語った。 TBSは意見書を受けて「BPOのご指摘を真摯(しんし)に受け止めます。報道機関としての基本原則を再確認し、現在進めている再発防止策を着実に実行して、視聴者の皆さまの信頼回復に努めてまいります」とのコメントを発表した。