一連の薬物問題を受け、日本大学は、アメフト部を「廃止」する方針を示しました。この対応について、長年のライバル校である、関西学院大学の名将、鳥内秀晃前監督が番組の取材に応じ、日大を厳しく批判しました。 関西学院大学アメフト部 鳥内秀晃前監督:「びっくりしました。なんで急にやねんと。逮捕者が2人から3人になって、急に廃部は違うんじゃないかな」 鳥内さんは“悪質タックル問題”で、被害を受けた当時の監督です。 鳥内前監督:「夢を持ってきて入ってきているのに、道筋を立てて廃部と言ってない。大人の都合で廃部だと。じゃないと世間が納得しないとか。世間に向けてやるんちゃいますよ。残された学生のために、どうするのか考えていかないと」 30日に、文部科学省へ改善計画を提出した日本大学。 日大が提出した改善計画:「これは一学校法人の転落に止まりません。栄誉ある『日本』国の冠を頂く『日本大学』の失墜は大きな打撃を国と国民に与えることになりかねません」 大学が失った信頼を回復するためには、アメフト部を廃止しなければならないと判断したようです。 ただ、部員たちが納得しているわけではありません。現役部員13人が29日に日大本部を訪れ、廃部の撤回を求めるとともに、180人分の署名が入った要望書を提出していたことが分かりました。 アメフト部員の要望書:「無実な部員が大半を占める中で、廃部という判断、結論に正当性がなく、アメフトをやる環境を奪われるのは納得できるものではない」 時を同じくして、廃止の撤回を求めるオンライン署名も立ち上がりました。賛同者は1万5000人に迫る勢いです。 鳥内さんが違和感を抱いているのは、日大の場当たり的な対応です。 鳥内前監督:「残された全然関係ない学生たちがいっぱいいるわけです。彼らに対してどうするんだと。行き当たりばったりで、世論を見ながら反応しているようにしかみえない“学生ファースト”でやっているのか疑問」 去年10月以降、部員の薬物使用に関する情報が寄せられていましたが、大学側が動いたのは今年7月。大麻とみられる植物片を見つけたものの、12日間にわたって手元に保管し、警察には報告しませんでした。処分内容をめぐって林理事長と澤田副学長の対立も表面化。法廷闘争に発展しています。 一連の対応について、日大はこのように総括しています。 日大が提出した改善計画:「ガバナンス機能を失い、危機管理能力を発揮できず、コンプライアンス体制の破綻により、失態を重ねてきました」 鳥内前監督:「学生のために大学はあるんです。完璧な学生はいません。色んな学生がいます。その子たちは色々な個性があって、成長させてあげて、世の中に送り出すのが使命なので。それを忘れて、大人のエゴで早くふたを閉じちゃダメ」 日大は来月1日の理事会で、アメフト部の廃止を正式決定し、来月4日に林理事長が記者会見で説明することにしています。 ◆日大は「強固なムラ社会」 廃部については、来月1日に決定する見通しですが、文部科学省に提出した報告書では、すでに「廃部」について明記されています。 薬物問題が起きた原因については、こういった言及がありました。 日大が提出した改善計画:「『日大のことは日大内で収める』『アメフト部のことはアメフト部』という“幾層にもわたる強固なムラ社会”の意識があった」 また、今後のアメフト部については…。 日大が提出した改善計画:「慎重に審議を重ね“廃部とする方針”を承認した」 日大など大学事情の取材を続ける、大学ジャーナリストの石渡嶺司さんに聞きました。 (Q.廃部は既定路線になっていますが、これは“学生ファースト”と言えますか) 石渡さん:「複数人の逮捕者が出た以上、廃部は致し方ないが、“廃部の決定”が先行しているのは、大学側が『これ以上、批判を受けないようにするため』、アメフト部を廃止するという、トカゲのしっぽ切りに感じる。学生ファーストがあるとは到底思えない。残された部員の支援が置き去りにされている。部員の中には、アメフト部で活動することで“学費が免除”されたり、“奨学金が支給”されるといった、『スポーツ推薦の学生』もいます。だからこそ、大学側と部員たちで、同時並行で、今後の進路や処遇について話し合うべきだった」 日大側は、廃部に伴い、在校生や入部希望の新入生に対し、不利益が生じないよう対策を継続審議するとしています。